動物的で虱の湧く盲目の娘(ジェルトリュードと名付けられる)を、慈悲の心から引取った牧師。娘は牧師の下で教育を授かり、美しく心豊かな女へと変身した。牧師は妻と家族を持つ身でありながら、無意識的に彼女を愛するようになる。娘は娘で、意識的に牧師を愛していた。やがて2人は罪を犯す。厳格な教理に縛られない、自由なキリスト者であるジッドの聖書解釈がモチーフとなっている作品。
「ジュルトリュード。…お前は自分の愛を罪だと思うのかい?」
思わず哀願の調子が私の声にこもった。いっぽう彼女は、息もつがずに言い切った。
「でもやっぱりあたし、あなたのことは思い切れまいと思うの」