ルイ・マル(Louis Malle)監督の自伝的作品。ベネチアで金獅子賞。
ヴィシー・フランスのカトリックの寄宿学校を舞台に、子供の視点から「戦争」を描く。
シューベルトの『楽興の時第2番 変イ長調』が本作のテーマ曲となっている。穏やかな主題に、突発的に激しいエピソードが2度挿入されるこの曲は、映画内容と合っている。やはり音楽の使い方の上手さで言えば、ルイ・マルの右にでる監督はいない。
寄宿学校での生活は穏やかであって戯れている子供たちが微笑ましい。そうした日々の中に挿入される「戦争の影」に心を痛めた。バラの棘に触れた痕のような、小さくても深い傷が残る。
子供たち、教師や聖職者を含め寄宿舎の皆が一堂に会して、チャップリンの映画『移民(The immigrant,1912)』を鑑賞するシーンがある。ユダヤ人のジャンも、ジュリアンも夢中になって笑う。普段は厳格な神父様も高笑いしてる。お互いに何の壁もない、戦争の現実とは真逆の優しい世界がとても印象的であった。
一切の無駄がない、大変洗練された映画だ。美しくて哀しい。
Frostbite 霜焼け
Pious 敬虔な