Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

ブリテン『キャロルの祭典』よりBalulalow-スコットランド低地語の観察

 E.B.Britten Op.28-4b "Balulalow"。

 ブリテンの『キャロルの祭典(A ceremony for Carols)』の中の一曲である。ソロを担当しているのは、エドワード・バロー(Edward Burrowe)。著名なボーイ・ソプラノである。
 歌詞はスコットランドの詩人ウェッダーバーン兄弟(James Wedderburn, John Wedderburn, Robert Wedderburn)がルターの賛美歌集"Vom Himmel hoch, da komm ich her"(1534)のスタンツァ13,14をスコットランド語に訳したもので、スコットランドバラード集"The Gude and Godlie Ballati"(The good and godly Ballades)の第二版(1567)に収録が確認されている。

 

O my dear heart, young Jesus sweet,
愛しい人、幼きイエス
Prepare thy cradle in my sprit
揺りかごを、私の心のなかに準備してください
And I shall rock thee to my heart,
そうしたら私がそれを揺らしましょう
And never more from thee depart
私はあなたのもとから離れはしません

But I shall praise thee evermore,
私はいつもあなたを褒め称えます
With songs sweet unto thy glory
あなたの栄光へ捧げる、甘い歌によって
The knees of my heart shall I bow,
私はひざまずき、あなたに従います
And sing that right Balulaow
そして正しい子守唄を歌いましょう

 スコットランド英語と正書法に適った英語を比較し観察できるのは第一にフランス語風の綴りが目立つことである。これに関して、スコットランドは1295年以降永らくフランスと同盟関係にあり、スコットランド人は度々フランス軍に従軍し、フランスの大学で法律を学んだ。ともすればスコットランド人の生活圏にまでフランス語が浸透していたことは想像するに難くなく、イングランド人の英語よりも、フランス語的であることは理にかなっている。
 第二に、古英語の単語(sang,richt)が見い出されることである。これはスコットランド語が古英語の音韻や音声を残している為に、綴りに変化が生じなかったのか。
 第三に、スコットランド語の特有の語尾(ie,it,il)である。
 ソロの子が上手だからか知らないが、このスコットランド英語の響きはとても心地よい。

 

3/26追記

5行目のevermoir=evemoreは古語に分類される。always, continuallyと同義。
ref. Wilhelm Franz(1892-1895). Zur Syntax des alteren Neuenglisch.