Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

「Roses are red」『マザーグース』より

イングランドの童謡(nursery rhymes)集から、甘い恋の詩を取り上げる。

 

Roses are red, Violets are blue,
Sugar is sweet and so are you.

バラは赤く、スミレは青い
砂糖は甘く、そしてあなたも

 

この詩はしばしば、バレンタインデーの贈り物に添えられるのだそう。「甘く(Sweet)誠実(Violet)な愛(Rose)をあなたと共有したい」といったニュアンスだろうか。この詩の原型は、16世紀後半の詩人エドマンド・スペンサー(Edmund Spenser)の叙事詩『妖精の女王(The Faerie Queene)』の中にある。

 

It was upon a Sommers shynie day,
(When Titan faire his beames did display)
In a fresh fountaine, farre from all mens vew,
She bath'd her brest, The boyling heat t'allay;
She bath'd with roses red, and violets blew,
And all the sweetest flowres, that in the forrest grew.

 

これを分かり易くすると、

 

It was on a summer's shiny day,
それは眩しい夏の日
(When Titan hot his beams did display)
巨人(太陽)の熱い眼差しが映る頃
In a fresh fountain, far from all mens view
清らかな泉の中で、男の目から逃れて、
She bathed her breast, the boiling heat allaying
彼女は水を浴びた、うだるような熱さが和らぐ
She bathed with red roses, and blue violets
彼女は水を浴びた、赤いバラと碧いスミレ
And all the sweetest flowers, that in the forest grew
そして森に育つすべてのかぐわしい花々に囲まれて

 


この叙事詩アーサー王物語をモチーフとおり、強い寓意性を特徴とする。詩の中で、赤いバラと碧いスミレは妖精(She)を美しく飾り立てる道具であり、云わば彼女のために用意された贈り物である。現在"Roses are red"の詩がバレンタインデーに謳われるゆえんを、ここに垣間見ることができるのではなかろうか。
さて、本詩を現在の形に大きく近づけたのはイングランドの考古(好)学者ジョセフ・リトソン(Joseph Ritson)であるが、その話はまた次回に。今日は11kmも散歩して大変疲れた。

 

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