晴、立夏を迎へてをらぬのに暑し。リネンスーツを着用。
朝医者へ行き睡眠薬、その他二週間分処方さる。この頭痛はいつまで続くのだらう。
午過ぎ、藤沢まで後輩のピアノ演奏会へ赴く。恋人紹介さる。扨てProgramme、第一部は私好みにサティ、ラヴェル、ドビュッシー、プーランク。第二部はヒンデミットやカプースチン、あとは聴くに堪へぬポピュラー・ミュージック。
音楽が始まる。双の眼をとじ、奏でらるる音を追ふ。脳漿で秩序と美とを探す。仏蘭西のエスプリの齎す静寂と快楽、魂の骨休め。そこへ無上の夢を破る現代音楽。そは虚しきサンバル、けたゝましく響き渡れど、獣の咆哮と同じ、我が魂への効験は無し。
なほ無調音楽=現代音楽ではない。無調に聞こえど、全体が壮大深遠なる秩序の裡に構築されてゐる時、それは大層美くしい。これはワーグナーや仏蘭西教会音楽の美の秘鑰。
最期に演奏されたのはシャルル•トゥルヌミールの『12の詩的前奏曲』(1932?)から、「第12番三位一体礼賛(Glorification de la Trinite)」。集中して聴いた積りだが、私には三位一体を見ること能はず無念。