
晴、立秋を迎えている。このつまらぬ破滅的な生活はいつまで続くのか。
セルゲイ・パラジャーノフ監督作。原題ままに和訳すれば「忘れ去られた祖先の影(Shadows of Forgotten Ancestors)」となる。ウクライナの少数民族フツル人の美くしい青年の男女、イヴァンとマリア。幼少期から一途に結婚を夢見て、牧歌的な愛を育んで来た二人であったが、イヴァンは出稼ぎの折にマリアを事故で喪う。一人空蝉のイヴァンはどう生きるのか。「マリーチカ、俺たちは終に一緒になれないのだろう!」。
人類の画一化を理想とする灰色のソ連で、かように多彩で詩的な、ロシア語の一切聞こえてこない、民族色の強い映画が作成された背景が気になるところ。監督はグルジア出身のアルメニア人であったということだが、いつの時代もロシアの専横に虐げられて来た少数民族の、力強い反骨精神の表れだろうか。我ながら陳腐な解釈のように思うが、世間でもそう受取られているようで、ロシアとウクライナの戦争が続く中で再評価されている。
美くしい映画だと思う、こと民族音楽のポリフォニーが。だが死んだマリアが怨念じみてて、それが全体のまとまりを損ねている。もっと民族の素朴な美くしさの表現に集中していれば、私の評価は違っただろう。