Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

パリ紀行(4)_ヴィリエ・ド・リラダン伯の墓

巴里に来て十日が経つ。本日のミサ曲はキリアーレから第12番Pater Cuncta(万物の父)が歌われた。サンクトゥスの抑揚が美くしい。これが歌われるミサに与った事のある現代日本人は、恐らく私だけだろう。

 

私はメトロを降り、メニルモンタン通りからペール・ラシェーズ墓地に入った。ショパンドラクロワプルースト、名だたる芸術家が眠るこの苑に、ヴィリエ・ド・リラダンの奥津城はある。

内苑に入ると欅並木。木の葉の色づく晩秋に来たらさぞ美くしいだろう。リラダンの墓は79区、地所北東の奥地にある事は査べた(当然ながら案内はない)。石畳の坂道をゆっくりと、十分程歩く。

それは通り沿いにあった。途中、幾星霜の風雨に晒されて風化苔生し、まったく識別の付かぬ墓標を複数見たから心配をしたが、ヴィリエ・ド・リラダンの名と紋章は、けざやかに、墓石に刻まれていた。

紋章は十字模様の布地を下げる腕、VA OULTRE<彼方ヘ行ケ>の標語。

集団墓地行きの運命を、マラルメをはじめとする彼の友人、グラン=ヴィリエの天才を認めた少数の具眼者たちに救われたヴィリエ・ド・リラダンは、此処、森厳なるペール・ラシェーズの丘より汚濁の都府を瞠め乍ら、さて何を思うやら。

 

 

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