Mon Cœur Mis à Nu

But, darlings, the show must go on.

スタンリー・キューブリック『バリー・リンドン(Barry Lyndon)』1975

スタンリー・キューブリック監督作。パリ・カルチェラタンの小劇場での上映を見逃して以来、久しく見たかった作品。

舞台はジョージ三世時代の英国。ヘンデルのサラバンドと決闘の場面とによる幕開けが如何にも18世紀的。蝋燭の火だけを頼って撮影したというから驚きであり、衣装、美術、音楽、いづれをとっても見事な歴史映画の大作。玉に瑕なのは、主人公をはじめ、要所要所に登場するアメリカ人俳優のひどい米国訛りの英語である。

立身出世の野望を抱く、没落したジェントリの伝記的物語。主人公は軍人、賭博師、そしてレディとの婚姻を経て、遂には貴族の一員になり仰せた。だがそれは見せかけに過ぎず、所詮は資産なき草莽のアイルランド人、かかる「成り上がり」を世間が許すはずもない。

ウィリアム・サッカレーの The Luck of Barry Lyndon (1844) が原作と言うが、我々の脳裏に浮かぶのはスタンダールの Le Rouge et le Noir (1830) であり、哀れなジュリアン・ソレル青年の運命だろう。ソレルにしてもバリーにしても私の境遇と重なる所がある。結局身分と財産なき男の出世の道は、何が正解なのだろうか。