Mon Cœur Mis à Nu

But, darlings, the show must go on.

ドミニク・クック『クーリエ: 最高機密の運び屋(The Courier)』2020

晴。本日は仕事を休んだ。投函はまだだが手紙を書いた。矢張り書くといふ事は良い、一々字引をするのではなく、脳裡に浮かんで来た儘に、一気呵成に思ふが儘に書くのが良い。推敲は必要だが、まずはそれでいい、それが気持ち良い。大分楽になつた。

 

ドミニク・クック監督作。ベネディクト・カンバーバッチが主演のスパイ映画。「クーリエ(courier)」という言葉は微妙で、外交伝書使と公式に訳されるやうだが、まあ我々は国際宅急便でしか聞かない。「アタッシェ(Attaché)」のやうに、外交官の位階なのかと思つたがさうでもなく、どういふ人間に与へられる身分なのか知らと、不思議に思つてゐる。

スパイ映画には2通りある、007や、私は『コードネーム U.N.C.L.E』が好きだが、大いに脚色されてゐて、スタイリッシュ、娯楽の要素が強いもの。もう一つは『ブリッジ・オブ・スパイ』のやうな、史実に基づき、疑心暗鬼の凍て付いた冷戦の世界観を描く、歴史物。本作は後者。国際政治学を専攻した者にとつて、「キューバ危機」に題材を取る映画は、面白くて堪らない。それは政策決定者の「認識」の重要性が再確認される契機であつた。

良い映画だ、ソ連を悪の帝國のやうに描き過ぎてゐるとは思つたが、まあ西側の人間にはさう見えたのかも知れない。私としては冷戦期を生きた人々は羨ましい、身近にそんなファンタジーが存在したなんて。私が当時を生きてゐたら、どんな人間だつたらう?『レーニン全集』は読んだらうか?学生運動に参加したらうか?それとも共産主義者をペストのやうに忌嫌つたらうか?

恐らくは私は学生運動に傾倒する若者を、彼等の情熱を、連帯感を羨ましく見ただらう。それに加はらうとはせずに。

 

次の土曜日、私は或る人に会ひにいかうと思ふ。会へるかは判らぬ。だが兎に角も行動したはうが良い。面会が私の人生を決定付けるかも知れないが、それでも構はない。もうさういふ年齢だ、これ以上浮世をたゆたつてゐると、気が狂つてしまいさう。