
熊井啓監督作。三船敏郎が千利休を演ずる。ヴェネツィアの銀獅子賞。
利休居士の死後、洛北の山庵に遁世する本覺坊といふ弟子(架空の存在)が、織田有楽斎、東陽坊長盛、古田織部そして千宗旦と交流し乍ら、利休がどういつた気持で死んでいつたのか、に迫る物語。
利休は豊太閤から堺に蟄居を命ぜられ、間もなく死をも賜ることが明らかであるなか、一言だに申開きをせず、死を受容した。それが弟子達の間でも不思議であつたのだ。
物語が進み、その謎が闡明されゆくにつれて、私は茶の道に隠された「激しさ」てふものを、垣間見た気がした。畢竟日本文化には二面性があり、静謐なエレガンスのみで語れるものではない。日本文化にはブルータルな血の匂ひがある。利休は死に向かうて初めてわび数寄は完成したといつた。「和敬清寂」を唱へる茶道に於てすらさうなのだ。