Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

三島由紀夫『わが友ヒットラー』

 

レーム どんな時代になろうと、権力のもっとも深い実質は若者の筋肉だ。それを忘れるな。

 

 政治との訣別。「過去の夢」に対する殉教者のような従順さ。
 レームのノスタルジアは否定され、彼は破滅する。シュトラッサーの予言通りに。

 

クルップ きこえるか、アドルフ、突撃隊の下級士官たちの軍服の胸を破る銃声が。

ヒットラー きこえますとも。―― 射て!…射て!…射て!―― 筋肉だけをたよりにしたやつらの青春のこれが最後だった。

 

 もちろんこの戯曲における英雄はレームである。三島作品における登場人物は、死を以て始めて栄光を手にすることができる。

 本作におけるレーム、『憂国』の青年将校、『奔馬』の飯沼勲。三島が憧れた男たち。彼らはみな剛い体を持ち、ノスタルジアに身を捧げ、政治に敗北して死んだ。三島もまた同じ道を辿った。だが彼は栄光を手にしたか?