Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

三島由紀夫『午後の曳航』第二部 冬

夢想の中では、栄光と死と女は、つねに三位一体だった。しかし女が獲られると、あとの二つは沖の彼方へ遠ざかり、あの鯨のような悲しげな咆哮で、彼の名を呼ぶことはなくなった。 

 

 三位一体が崩れても、栄光=x=死の式はそのまま残ることになる。
 三島が「死」に抱くポジティブイメージは不変だ。

 

 先日述べた「不可能」はやはりもう一度登場した。この世界の凡俗に抗うことはやはり「不可能」なのかと嘆く、少年たちの絶望の形で。竜二の処刑は、この絶望に対する反発だ。

 

 本作品の主人公は紛れもなく少年たちだ。無形の崇高な理想を信じる純粋な少年たちの衝動。三島小説の一大テーマを提示している作品なのかもしれない。『奔馬』との類似性を感じる。

 

 本作は映画化もオペラ化もされている。めずらしいことに日本語オペラだ。