Epistula ad mē

「美」というものは、藝術と人間の霊魂の問題である

リラダン『トリビュラ・ボノメ(Tribulat Bonhomet)』1887

東京創元社、斎藤磯雄氏の翻譯。
いかなる意味に於いても「貴族的」ではないトリュビラ・ボノメ。その心は実用主義、折衷主義、進歩主義で芸術家嫌悪。「白鳥を殺す輩」。そんなボノメが、不滅の霊魂に関心を寄せるルノワール夫妻との交流を通して「神秘」に遭遇する。

 

ヴィリエは自身が軽蔑する人種を代表する者として、ボノメを生み出した。その皮肉が面白い。ヴィリエは友人たちと語らう時、しばしば彼の役で道化を演じたという。

 

全くですね!その神聖なる常識の前に頭を下げませうよ。世紀の変るごとに常に意見を変へ、その本領たるや、生れつき、霊魂といふ名をさへも憎悪するところにある、その「常識」の前にね。

 

つまりかうです、この内面的な道づれ、この神秘幽玄なる存在こそ、唯一の実体だといふこと、そしてこれこそ人格を構成するものだ、といふことになるのです。外面的な肉体は、もう一つの方の打出し細工にすぎないのです。(…)要するに有機体は、これに浸透する霊体の便宜的手段にすぎないのですね!

 

「汝はおのれを何者と信ずるのか」

「現代精神にひそむ下心のつもりでございます。」