Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

アナトール・フランス『神々は渇く(Les Dieux ont Soif)』1912

時系で云えば、ジャコバン派の恐怖政治全盛から、テルミドール9日のクーデタ、ロベスピエール一派の処刑までを描く歴史小説。哲学的でありながら物語としても面白い。ノーベル文学賞作家の力量だろうか。

正義に燃える心を持つが故に人間性を喪う青年、エヴァリスト・ガムランジャコバン派として、多くの同胞を裁いた彼は、やがて裁かれる。人間性の象徴たる己がナイフによって。

私のイデオロギーと一致する所が大きく、非常にこころよく読めた。人間が「理性」といかに無縁な存在であるか。「正義感」なんてもので物事を判断するくらいならば、フランソワ・ラブレが書いた『パンタグリュエル』のブリドワのように、全て骰子を振って決めるが良いのだ。

 

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アナトール・フランス(Anatole France),1844-1924
その革新的思想とは裏腹に、作風は古典主義的であった。懐疑的人間、社会の欠陥や不正を辛辣な筆で諷刺し、揶揄し、一切の狂信主義の危険を警告した。