Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

モーパッサン『脂肪のかたまり(Boule de Suif)』1880

モーパッサンによる自然主義文学の傑作。高山鉄男譯。短い紙面の裡に、動物的本能と利己主義との卑しき奴婢たる人間の、惨めさを描破する。文体は場面場面に居合わせた者の日記のよう。私は平生、自然主義文学は退屈する為読まないのであるが(惨めな人間と付き合うのは現実だけで沢山)、本作の皮肉な調子は、私の気に入った。

 

ギ・ド・モーパッサン(Guy de Maupassant)。1850年ノルマンディーにてロレーヌ貴族の家柄に生れる。普仏戦争に従軍した後、創作活動に入る。戦争で観察した人間性の惨めさと、それに対する絶望とが、彼のあらゆる作品には反映されている。