Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

20231004日記_覚書など

霧雨。毎月の紅茶と、西武百貨店から商品券を受取る。もつと繁く日記をしたためるべきなのだけれども、つひ億劫で。

中秋の月の皎皎たるや見事だつた。その翌日だつたか、仕立て屋へ行き冬のコートを注文した。シングルブレステッドのチェスターフィールドコート。伊太利製カシミアの480g、黒のコート生地で。上襟には黒の天鵞絨を打込む、失はれし秩序への弔意。3つ釦2つ掛で比翼仕立にはしてゐない。バックベルトでつよく絞る。

 

彼は、十年前に愛していたあの女性をもう愛していない。それはそうだろうと私は思う。彼女はもはや同じではないので、彼だって同じではない。あのとき彼は若かったし、彼女だって若かった。彼女はすっかり変わってしまった。あのときのままの彼女だったら、彼もまだ愛したかもしれない。(『パンセ』123)

 

私の初戀。最期に触れたのは十年前、最期に話したのは六年前、最期に見かけたのは四年前。パスカルが云ふやうに、あの人はすつかり変つて仕舞つたに違ひない。結局私が愛してゐるのは私の記憶でしかない。