祖父危篤の報を受けて暫し実家に身を寄せてゐる。手持無沙汰で子供部屋の本棚を眺める。英語の参考書が大半、ギリシア神話集にドイツ詩集(読んだ覚えはない)、漱石全集、岩波と新潮の文庫判が数十冊。 『仮面の告白』が目に留まつた。本棚にある他の三島作品…
音楽も書物も魂の鎮痛剤のやうなものだが、薬と同じで耐性ができるらしく、今では極限られた範囲のものしか私に効能を示さない。それも極めて短い時間しか効かないし、作用の切れた際生ずるあの切なさ、あの故知らぬ苦しみは、余りに厄介な副作用である。
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