Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

ゲーテ『若きウェルテルの悩み(Die Leiden des jungen Werthers)』1774

岩波の竹山道雄譯を読んだ。
良い本だ、人にも薦めやすい。

 

愛してはならぬ女を愛して、苦しむウェルテル。ロマン派時代の、人間の自我への目覚めを、この一青年の懊悩を通してみることができる。

不徳な描写もあるはあるが、牧歌的、道徳的な雰囲気。そう、健全なのだ。健全な若さ故、情熱を持つが故の苦悩。ウェルテルは、私が普段読む小説の主人公には無いものを持っている。

『若きウェルテルの悩み』が無ければ、漱石は『こゝろ』を書けなかったのではなかろうか。

ウェルテルの自殺と、ヴィリエの『サンチマンタリスム』のマクシミリアン・ド・W伯爵の自殺とを較べてみた。なんたる相違。

 

「わが神!わが神!なんぞわれを捨てたまいしや」と叫ぶこそ、被創造物たる人間の声ではないか?それだのに、この私がこの叫びを発するのを恥じることはない。そのような瞬間を思って苦しむことはない。諸天を布のごとくに捲く力のある、かの神の子さえ、それはまぬがれなかったことであるものを! (p.158)

 

長い夜だ。『ヴァルキューレ』を聴いている。