一幕からなる戯曲。1925年新潮社上梓の山内義雄譯を読む。
「闖入者」とは運命の事を云っている。「逃れられぬ運命は如何に我々に逼って来るのか」という主題を、彼一流の対話法と、音や光の象徴で表現している。
メーテルランクの運命論には、『青い鳥』(実は未読)辺りで転回がみられるらしいが、初期作品の1つたる本作に於いて運命とは、人間の無力さを強調するもの、人間の生活を忽ちにして覆してしまうもの、即ちネガティヴなものとして捉えられている。
エドガー・アラン・ポオの『アッシャー家の崩壊』を思い出した。破局がじわりじわりと近づいて来る豫感、読者にこれを感ぜしむる所に共通を見出したのだ。
今月の記事はメーテルランクの事が多くなりそう、まだ『青い鳥』と『モンナ・ヴァンナ』が積読リストに入っている。