前作の『彼方』で人工的楽園に浸っていたデュルタルが信仰の道へと「出発」する。これまでの自分自身に対する侮蔑と慚愧に懊悩する男の内心には痛ましいものがある。
霊的自然主義、緻密な細部描写が特徴的。『さかしま』や『彼方』同様、よほど変わり者でない限り読了し得る書物ではないが、それを果たした時の充足感は、確かにある。
もしもあの連中が平修道者の末席につらなるものよりも更に劣っていることを知ったらなあ!またもし、トラピストの豚飼いの法悦のほうが彼らのどんな会話や書物よりもぼくに興味を与えることを、彼らに想像できたら!