Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

リラダン『至上の愛(L'Amour suprême)』1886

そして、ありし日と同じく、私は感じた、この若い女人に於て私を魅了するものは唯々その魂の清澄のみであることを!

ヴィリエの短篇集、及びそこに録された同名一短篇。
譯者は本物語を、ヴィリエ自身の初恋の告白であると捉えている。「真の貴族は唯一度しか恋をしない」ために、彼最後の恋の記憶でもある訳だ。
これに対する恍惚に近い哀惜が読み取れる。16歳の頃、故郷ブルターニュで経験した無垢至純な恋の記憶は、彼の諸作品の素材となっているのだ。

さて、ヴィリエの魅力とは? それは彼の理想に対する熱量である。
彼の作品からは、俗悪な現世に対する諦念が片鱗も見出だされない。リラダンが欲したのは「戦い」と「勝利」。

ロマン・ロランはヴィリエをも英雄の1人に数ふるべきであった。我らがヴィリエ・ド・リラダンベートーヴェンさながら、「絶望」から「歓喜」を紡ぐことのできる英雄に他ならぬのだから。