Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2020.08.13 日記

 地元の書店「自由書房」が閉店していた。僕の知らぬ間に。
 置いてある本の品揃えで言えば、京都の丸善に匹敵していた(気がする)。
 近頃の書店といえば、参考書とコミックと、しょうもない啓蒙書ばかりを並べているものだが、「自由書房」は岩波文庫だけで棚一列を埋めてしまうような、そんな書店であった。

 孤独を紛らわすため学校帰りに通ったものだ。僕はここで日本文学を覚えた。少しでも売上げに貢献したくて、本を買うときは必ずここを訪れた。進学して地元を離れてもなお、帰省する度に文庫本を1冊買った。ブックカバーがまた洒落ていたのだが。

 閉店を知って、流石に落ち込んだ僕はそのまま街を歩いた。
 40万人都市とは思えないほど人がいなくて、街を見渡せば、塗装の剥げた貧相な建物ばかり。未来だとか、可能性だとか一切感じられない。どうしようもない閉塞感のある街だ。

 

 こんな場所で生まれ育った人間が、世界に出ていけるとは思えない。希望や可能性に賭けることをしない、凡な人間しか育たないだろう。