Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

函館紀行(1)_カトリック元町教会

暫く函館に逗留している。本日の天気は霧雨、涼しい。京都が37度、東京32度、軽井沢でも28度だと云う事だが、函館は24度。何たる特権の享受。この気温と、一向に顔を出さぬ太陽との所為で、私はイングランドに来ているかのような錯覚を覚え始めた。じめっとした港町、ノーフォーク辺りだろうか。

 

此度の羇旅に計画はない。崎嶇たる世の事を忘れ、日々を徒然なるままに過ごすと心に誓っている。好きな時間に起きて、食事をし(宝来町にある"Bons Amies"という仏料理屋が気に入った)、ホテル近くにあるカトリック元町教会へ赴き、祈る。これ以外の事は徒爾である。

 

 

元町教会について。ゴチック様式だが、ロマネスクの野暮ったさがある。鐘楼の上端には、律儀にもニコラウス一世の取決めに従って風見鶏が具えられている。13世紀ドイツの田舎でみられそうな、中世の趣湛えるファサードである。その内部、ゴチックのアーチの下には、往昔のトリエント・ミサの時代を思わせる絢爛な大祭壇。左右、木彫の十字架の道行きが身廊を囲む。これらは時の教皇ベネディクト15世から贈られたものだという。私は、日本で最も美くしい教会は碑文谷教会だと思っていたが、今後訊ねれた時には、函館の元町教会と答える積でいる。