Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

中島敦『斗南先生』1942

中島敦による短篇小説、私信と云っても可い。奇言奇行に富む漢学者であった伯父に対する作者のアンビバレントな想いを分析する、心理小説の趣がある。

決して彼が不遇なのでも何でもない。その自己の才能に対する無反省な過信はほとんど滑稽に近い。時に、それは失敗者の負惜しみからの擬態とも取れた。

作者は自己の気質が、伯父のそれと似かよっていることを認めつつ、上のような厳しい分析を残した。つまり、これは自己糾問である。ここに至って読者は、『山月記』李徴の苦悩もまた、作者自身のそれであることに気付くのである。

 


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