ある僧侶が叙階式で見かけた嬋娟たる女に魅了され、以来夢か現か分からぬ逸楽に身も心も委ねるという話。ポオを彷彿とさせる屍体愛好的傾向。夢と現実が優位性を競う、後の超自然主義文学を予感させる神秘的主題。ロマンチックな語彙。読み応えがある。
テオフィル・ゴーチエ(Théophile Gautier)1811-72
はじめユゴーの「セナクル」に属し、ロマン主義的な作品を書いていたが、やがて芸術至上主義者に至り、「藝術のための藝術(l'art pour l'art)」を唱えた。画家を志していただけあり、幻想的な事物や景観を、見えるものとして描き出すことに優れている。