Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

スタンダール『赤と黒(Le Rouge et le Noir)』1830

 副題は「19世紀年代記(Sous-titré Chronique du xixe siècle)」。のちに1830年代記と改められている。1830年代とあるが、実際には七月革命(1830)前夜のフランス社会を描く風俗小説であり、同時に恋愛心理小説。

 ナポレオンを崇拝する貧しい青年ジュリアン・ソレルが、立身のために僧職を志す。上流社会に食い入るジュリアンの目を通して、その時代の偽善性・欺瞞性が暴かれる仕組み。

  「心理小説」としては聊か不満がある。レナール夫人はともかく、ジュリアン、マチルドの奇怪な性格にはついていけない。私は岩波文庫赤帯を読んだが、下巻の支離滅裂さを前に、ページを捲るのが苦痛であった。翻訳の問題か?

 

おれには、理想の生活だけを残しておいてくれ。あんた方の小刀細工や現実の世界の事柄は、おれにはどれもこれも不愉快で、おれは天上から引きおろされる気持がする。人はそれぞれの仕方で死ねばよい。

 

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スタンダール(Standhal), 1783-1842
本名アンリ・ベール(Henri Beyle)。彼が終生貫いた自由主義的な態度は、『赤と黒』のジュリアン・ソレル等、彼のあらゆる著作物に反映されている。