Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

トリュフォー『終電車(Le dernier metro)』1980

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円熟のフランソワ・トリュフォー(François Truffaut)監督。亡くなる4年前の作品。セザール賞を総なめにした。
占領下のパリ。モンマルトル劇場には「南米に逃れた」とされているユダヤの劇場支配人が隠れている。彼はカトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)演じる妻と協力し、ナチスの手から逃れながら演出を続ける。

スタジオ撮影、そして芝居臭い演技。あのトリュフォーが(!)。古典に還ったと揶揄されたのも分かる。しかしただベタなだけではない。幾つかのストーリーが平行して進む工夫はミステリアスで面白い。エンディングにかけての不穏さも。脚本の独創性は喪われていない。

タイトルの『終電車』というのは「劇場列車」のことだろうか。ラディゲの小説で解説のあった気がする。