Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

渡邊一夫『ヴィリエ・ド・リラダン覺書』1940

弘文堂書房上梓。渡邊氏の研究は齋藤磯雄氏が全面的に引継いでおられるから、この本の内容に新しい事は無かったが、以下の渡邊氏の言葉にはと胸を突かれた。

僕はやゝもすれば、リラダンの「人間」としての美しさにほれぼれとして、「作品」自身の持つてゐる麗しさを看過してはゐまいかと懼れるのである。

つまり、作者を崇拝する余り、センチメンタルに作品を観じているのではないかという危惧である。大いにあり得ることだ。「麗しさ」もそうだが、「瑕瑾」を看過してはないか?

結論、偕に看過しているだろう。というより、私の場合は意図的にそうしている。何故か? その方が気持ち良いからだ。私は趣味で、魂を宥める目的で読書をしている。酔えれば事実などどうでもよいのだ。