主人公のアルセストは愚直、潔癖な青年貴族。この世間知らずは恋に破れ、厭世を募らせた挙句、ついには俗世間との関わりを絶たんとする。「アルセスト風の」という形容詞を生んだ名作。潔癖な人間は生きるのが難しい。私もアルセストであるから、よく分る。
「いやはや、時代の風習は風習だから、そんなに気を揉むまいじゃないか。そして人間の性質を、すこしは大目に見ることにしようじゃないか。厳格一点張りで見るのはよそうじゃないか。人の欠点を見るんでも、すこしは寛大な心で見ようじゃないか。交際社会では、ゆとりのある心が必要だ。」
ヴィリエ・ド・リラダンからのアドバイス。
あの人たちのことを考へたために、少しばかりあの人たちのやうになるのを避けるやう、用心致しませうね。