Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

ボードレールについて

 ロマン派の場合、感傷に身をゆだね、心情を吐露するときに、いわば偶然的に詩ができる。これに反して近代詩の父であると同時に近代批評の父でもあるボードレールの場合、単なる詩の技巧などというものを越えて、詩の言語や形式の問題について、きわめて意識的・自覚的であった点で、それまでの詩人たちと一線を画している。詩から不純物をいっさい排除して対象から独立させること、そして今まで見えなかったものを見、未聞のものを聞くこと、これこそがボードレールの仕事であった。

『新版フランス文学史白水社1992, p.206