2020-11-17 三島由紀夫「純粋」について Literature/Humanities 『奔馬』新潮文庫 p.151 純粋とは、花のような観念、薄荷をよく利かした含嗽薬の味のような観念、やさしい母の胸にすがりつくような観念を、ただちに、血の観念、不正を薙ぎ倒す刀の観念、袈裟がけに斬り下げると同時に飛び散る血しぶきの観念、あるいは切腹の観念に結びつけるものだった。「花と散る」というときに、血みどろの屍体はたちまち匂いやかな桜の花に化した。純粋とは、正反対の観念のほしいままな転換だった。だから、純粋は詩なのである。