Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

アルベール・カミュ『転落(La chute)』1956

全編を通してクラマンスと名乗る男が聴き手に対し「告白」をする形。自身が「二重性」ある人生を歩んできたこと。自身が持つ傲慢さ、偽善性、孤独を独白する。
しかしそれは「懺悔」とは異なる。「だがあなただってそうでしょう」と言わんばかりの、云わば自己弁護だ。
最終的に彼がやりたかったことは、自身の告白を以て「現代人の肖像」を提示し、他者を裁くこと。「現代人」一般を弾劾し貶めることで、自分への「裁き」から逃れたかったのだ。彼は周りの人間に先んじて真理を得たことの高みに満足をしている。

 

娯楽小説ではない。執筆当時カミュが置かれていた状況に鑑みても、かなりの程度、彼自身の思想哲学をクラマンスに代弁させているのだろう。難しい箇所も多い、例えば身投げした女が、クラマンスの行動変化に対して与えた影響など不明瞭だと思う。人にお薦めできるかといえば、少なくとも友人にはしない。『異邦人』や『ペスト』のほうが楽しめるだろうから。

 

そうです、わたしたちは光を、朝を、われとわが身を赦すあの人間の聖なる無垢を失ってしまったんです。

 

もう12時を回ってしまったが、今日11月1日は祖父の誕生日。祖父の長寿を願ぎ奉る。

 

底意(そこい) 下心
女衒(ぜげん) 売春仲介業者
algebra 代数
アブサン(absinthe) 緑色のハーブのリキュール