Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

ソネット20番 Shakespeare's "Passion Master-Mistress"

 シェイクスピアソネットは幾つかのグループに分けられ、その中の多くは"Fair Youth"すなわち美男子に贈られた詩であるが、ソネット20番の同性愛的志向は露骨で面白い。 

          20
A woman’s face with nature’s own hand painted
Hast thou, the master-mistress of my passion;
A woman’s gentle heart, but not acquainted
With shifting change as is false women’s fashion;
An eye more bright than theirs, less false in rolling,
Gilding the object whereupon it gazeth;
A man in hue, all hues in his controlling,
Which steals men’s eyes and women’s souls amazeth.
And for a woman wert thou first created,
Till nature as she wrought thee fell a-doting,
And by addition me of thee defeated
By adding one thing to my purpose nothing.
 But since she pricked thee out for women's pleasure,
 Mine be thy love and thy love’s use their treasure.
 
            -William Shakespeare 
 
君は女神の手により創られた女の顔を持つ
男であり女でもある私の愛の主人
女の様に優しい心を持つが
偽りの乙女心特有の移り気は知らない
女に優る一途で明るい瞳は
みるものすべてを輝かせる
その容色を以てすればすべてが思いのまま
男の視線を奪い女の魂を揺さぶるのだ
君ははじめ女性として創られたのだが
女神が君に心血を注ぐうち恋に落ちて
僕から君を奪い去ってしまった
僕には必要のない"ある物"を加えることで
君は女の喜びの為に生まれたのだから
心が僕のものならば体は女にくれてやろう
 
 7行目の"hue"であるが、基本的には"appearance"と解釈した。そこに本来の意味"colour"が持つ様なニュアンス、表情の色っぽさ艶やかさを取り入れて訳したかったので容色とした。"hue"に関しては議論が絶えない、例えばオスカーワイルドは女性役の男優Willie Hughesを指していると指摘したそう。
 
 ところでキリスト教文化圏にはソドミー法というものがあったが、同性愛的表現について裁く法律は無かったのであろうか。