Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

Films

『パッション(The passion of the Christ)』2004

メル・ギブソン監督作。キリストの受難を描く。全編アラム語とラテン語による、吹替版は監督の意向で作成されていない。サタンの登場以外は、共観福音書に極めて忠実であるように思われる。 世の人の救いのため、自らの尊き命を捧げ給うイエズス。笞打たれ血…

ヴィスコンティ『山猫(Il Gattopardo)』1963

ルキノ・ヴィスコンティ監督作。カンヌでパルム・ドール。俳優はバート・ランカスター、アラン・ドロン、クラウディナ・カルディナーレら、ヴィスコンティ作品にお馴染みの顔ぶれ。 教養と秩序、正統美。これぞ芸術。バチカンの推薦を受けるのも宜なる哉。こ…

『上海の伯爵夫人(The White Countess)』2005

ジェームズ・アイヴォリー監督作。映画のためにカズオ・イシグロが脚本を書きおろした。題名からして白系ロシア人の話だろうなと思い、久しく気になっていた。 妻と子を亡くし、半ば自暴自棄の生活を送る米国人外交官(レイフ・ファインズ)は、異国の地、上海…

『地獄に堕ちた勇者ども(The damned)』1969

ルキノ・ヴィスコンティ監督作。 製鉄一族である男爵家。当主が殺害されequibiliumの崩れた一家の、醜い権力闘争を描く。デカダンな風俗描写がその醜さを際立たせるが、この至高の腐敗に、美を見出す人もいるのだろう。渋澤龍彦氏あたりは歓びそうだ。 私が…

『聖バンサン(Monsieur Vincent)』1947

本日は聖ビンセンチオ・ア・パウロ司祭の記念日。ミサには行けなかったが、1947年のフランス映画『聖バンサン』を観て、彼に思いを致すことにした。 モーリス・クロシュ監督作。クロード・ルノワール撮影。幾つか映画賞を受賞した古典的作品であり、1995年ヨ…

ゴダール『カルメンという名の女(Prénom Carmen)』1983

ジャン=リュック・ゴダールが死んだ。まだ生きていたことに愕いた。あとヌーヴェルバーグで存命なのはクロード・ルルーシュくらい? 私は一時期フランス映画に凝っていた。だからゴダールの作品は少なからず観た。否、「フランス映画好き」を名乗る為に、観ざ…

『細雪』1983

市川崑監督作。吉永小百合が雪子を演ずる。 女優陣が大変美しい。『細雪』はみたび映画化されているが、本作は筋書きも雰囲気も、最も原作に沿ったものになっているのではないか。幸子の夫である貞之助を、どうして女好きの遊び人に描いたのか、その意味は理…

『炎上』1958

『犬神家の一族』(1976)の市川崑監督。京都大映の制作。音楽は後にオペラ『金閣寺』を作曲する黛敏郎。 三島由紀夫の『金閣寺』を原作とする。題名が『炎上』、寺の名前が「驟閣寺」となっているのは、映像化にあたり京都仏教界の反対を受けたからだそう。境…

『ドリアン・グレイ(Doriangray)』2009

オリバー・パーカー(Oliver Parker)監督作。オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』を原作としているが、オリジナルの要素が強い。本作はこれまで何度か映画化されているから、変化を付けたかったのだろう。ちなみにパーカーは、同じくワイルドの喜…

『天使も許さぬ恋ゆえに(Where angels fear to tread)』1991

フォースターの小説『天使も踏むも恐れるところ(Where angels fear to tread)』を原案とする映画。チャールズ・スターリッジ(Charles Sturridge)監督作。他のフォースターの小説同様、異なる人間が互いを理解する可能性と困難とを描いているが、本作にみられ…

『If もしも....(If....)』1968

リンゼイ・アンダーソン(Lindsay Anderson)監督作。1969年のカンヌでパルム・ドール。時計じかけのオレンジでアレックスを演ずるマルコム・マクダウェルのデビュー作、本作でも似たような役だ。パブリックスクールの伝統に抑圧された少年達の反抗を描く。 英…

『モーリス(Maurice)』1987

ジェームズ・アイヴォリー監督作。ヴェネツィアで銀獅子。ソドミー法が健在であった頃の英国、ケンブリッジで出会った2人の青年は、禁じられた恋をする。 アイヴォリーを賞賛すればよいのか、フォースターを讃えればよいのか判らぬが、階級、宗教、性に根差…

『ハワーズ・エンド(Howards End)』1992

『眺めのいい部屋』、『モーリス』に続き、フォースターの小説を原作とする、ジェームズ・アイヴォリー(James Ivory)監督映画。アイヴォリーは、実力あると判断した英国俳優を繰返し起用するのかな。本作でマーガレットを演じたエマ・トンプソン、ヘンリーを…

『決闘者(The Duellists)』1977

リドリー・スコット(Ridley Scott)監督作。彼の怪奇趣味は通俗的。功績を認められ、Sir.の称号を與えられた人物に対する無学な私の評価など、傍痛いだけであるのだが、私としては映像も音楽も鑑賞に堪えない。古典的教養の裏付けを感じられず、悪趣味さばか…

『オフィサー・アンド・スパイ(J'accuse)』2019

仕事終わりに池袋のシネマで。 『戦場のピアニスト』、『マクベス』のロマン・ポランスキー(Roman Polanski)監督作。ヴェネツィアで銀獅子。映画祭で上映後はスタンディングオヴェーションを受けたとか。 19世紀末フランスのドレフュス事件を題材とする。原…

『眺めのいい部屋(A room with a view)』1986

『日の名残り(The remains of the day)』のジェームズ・アイヴォリー(James Ivory)監督作。原作はエドワード・フォースターの同名小説。 O mio babbino caro! プッチーニ、ベートーヴェン、シューベルト、モーツァルトが使われている。見事な映像美、アイヴ…

『外科室』1991

五代目 坂東玉三郎氏の監督。原作は泉鏡花の同名小説。 ledilettante.hatenablog.com こんなに美くしいことがあるか。90年代に於て比類に絶する美くしき映画。美を表現するに言葉は多く要らぬと、納得せしめらる。伯爵夫人の高峰を見初めし時、閉じられた雙…

『エルネスト(Ernesto)』1979

サルヴァトーレ・サンペリ(Salvatore Samperi)監督作。同性愛が主題の映画。年端のいかぬ少年の、己の性的指向を判断しかねる話か。少年の苦悩を映している訳ではなく、寧ろ少年は周囲の人間を惑わす悪魔。ヰタ・セクスアリス。呪われよ。話に深遠さはなく、…

『二十四時間の情事(Hiroshima mon amour)』1959

アラン・レネ監督作。『去年マリエンバードで』程ではないが難解。愛も戦争も知らぬ私にとっては特に。ストーリー性が弱くイメージの連続である。ドビュッシーの音楽のよう。強いてあらすじを述べるとすれば、戦争によって心に傷を負った女と男の話。 背景音…

『去年マリエンバートで(L'Année dernière à Marienbad)』1961

作品名洒落ていると思う。 ヌーヴェル・ヴァーグ主流のカイエ派に対し、左岸派を代表する、アラン・レネ(Alain Resnais)監督による作品。ヴェネツィアで金獅子賞。ちなみにカンヌ国際映画祭は、レネの左翼的な政治的見解を理由に、本作品の上映を拒否した。 …

『ダントン(Danton)』1983

アンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda)監督によるフランス・ポーランド合作の伝記映画。時は大革命期、ロベスピエールによる恐怖政治の最中、ダントン処刑までの数週間を描く。配給はフランスのゴーモン社。セザール賞を受賞。 なんとも特徴的なのは、演者たち…

『シベリアの理髪師(The Barber of Siberia)』1998

ニキータ・ミハルコフ(Никита Михалков)監督作のロシア映画。云うまでもなくロッシーニの某オペラと掛けている。皇帝アレクサンドルⅢ世による観兵式のシーンが有名で、ずっと観たかった。90年代は意外と名作が多い。 情熱に身を焦がす帝政ロシアの士官候補生…

『ノートルダムのせむし男(The hunchback of Notre Dame)』1956

『寄宿舎; 悲しみの天使(Les amities particulieres)』のジャン・ドラノワ監督作。ヴィクトル・ユゴーの『ノートルダム・ド・パリ』を原作とする、古き良き時代のフランス映画。せむし男を演ずるのはアンソニー・クインズ、エスメラルダを演ずるのはジーナ・…

『天使のくれた時間(The family man)』2000

ニコラス・ケイジ主演。『素晴らしき哉、人生』をモチーフに制作された、クリスマスの家族物語。

ドゥミ『都会の一部屋(Une chambre en ville)』1982

2022年映画初め。ジャック・ドゥミ監督作。ヒロインは『家族の肖像』『1900年』に出演しているドミニク・サンダ。『ロシュフォールの恋人たち』に引続きダニエル・ダリュー、ミシェル・ピコリ(例に漏れず変態役)が出演。ドゥミは部屋の装飾や登場人物の服飾…

ロメール『クレールの膝(Le genou de Claire)』1970

エリック・ロメール監督作。駄作。何故この監督は、不自然で愚にもつかぬ、青臭い議論を好むのだろう。大嫌いだ。

ロメール『モード家の一夜(Ma nuit chez Maud)』1969

エリック・ロメール(Éric Rohmer)監督作。ジャン=ルイ・トランティニャン主演。私はこの映画監督が苦手、青臭いから。

『田舎司祭の日記(Journal d'un curé de campagne)』1951

ロベール・ブレッソン(Robert Bresson)監督作。早稲田松竹で観賞。云わずとしれたジョルジュ・ベルナトスの同名小説を下敷きにしている。 フランス北部の小さな村に赴任した若い司祭。信仰が形骸化する時代。村人からは受け容れられず、信仰への確信も揺らぎ…

『フレンチ・カンカン(French cancan)』1954

ジャン・ルノワール監督作。フランソワーズ・アルヌール(Françoise Arnoul)主演、美人だ。彼女は今年の夏に亡くなった。フレンチ・カンカンとムーラン・ルージュの誕生を描く華やかな(騒がしい)映画。「良い話」で終わらせない所がルノワール。それに最後の…

『ジョーカー(Joker)』2019

トッド・フィリップス(Todd Phillips)監督作。ヴェネチアの金獅子賞。歪んだ社会に於ける悲劇。負け犬に優しい主題だから受けたのだろう。面白かったが、こういう類の悪は美しくない、三流。