Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

Auguste Villiers de l'Isle-Adam

ドビュッシー「相思の人の死(La mort des amants)」『ボオドレエルの五つの詩(5 Poèmes de Charles Baudelaire)』1889

www.youtube.com ボオドレエル、『惡の華』の第121篇「相思の人の死」という4.4.3.4の十四行詩<ソネット>に、ドビュッシーが曲を付けた。詩は、相思の2人の愛と死、そして復活という主題。詩譯は齋藤磯雄氏のものを参照した。 Nous aurons des lits pleins d…

リラダン『アケディッセリル女王(Akëdysséril)』1885、再読

ヴィリエによる中篇小説。初出は1885年La Revue contemporaine誌上。『アクセル』や『トレードの戀人』と同様の主題を持つ。すなわち「或る魂が至高の完成に到達し、もはや下降以外にあり得ない」場合、至福の絶巓に於て自ら命を絶つことは美徳足り得るので…

『リラダン=マラルメ往復書翰集』白鳥友彦譯 1975

森開社上梓。ヴィリエ・ド・リラダン伯爵とステファヌ・マラルメの間に交わされた書翰集。互いの存在が、彼岸世界の詩人らをして、しばし現世にとどまる理由にすら成り得た友情。手紙は歯抜けで、内容に満足はしていないが、それでも示唆に富むものであった…

リラダン『遺稿断章』1

リラダン研究書の閲覧申請を断られた。落澹のあまりに、その三流大学図書館とレファレンスの婢女とを罵り且つ呪い(無論心の中で)、腹癒せに来月のオペラ『ボリス・ゴドゥノフ』の最上席を予約した所で、何とか腹の蟲は治まった。本の方は£70で英国から輸入…

マラルメ『ヴィリエ・ド・リラダン(Villiers de l'Isle-Adam. Conférence par Stéphane Mallarmé)』1890

ヴィリエを偲ぶステファヌ・マラルメによって、1890年2月にベルギーで行われた講演のテキスト。その翻譯の森開社による上梓。随分と前に神保町の田村書店で購入して目を通したが、覚書を遺していなかった。翻譯が拙く読み難いテキストである。 彼の読書量は…

リラダン『脱走(L'Evasion)』1887

一幕からなる散文の劇。エピグラムはヨハネ傳福音書から「ラザロよ、出で来れ」。ここに云うラザロは、ルカ傳第16章の貧しき者とは別人。ベタニヤのマリヤ、マルタの兄弟で、イエスの友人。ラザロは病に拠りて一度死ぬが、墓におかれて四日を経たころ、イエ…

リラダン『新世界(Le Nouveau Monde)』1880

ヴィリエ・ド・リラダンによる五幕、散文の戯曲。1875年アメリカ獨立記念を祝して催された脚本コンクールへの応募作品。賞金1萬フラン!応募作品約100篇の中から、ヴィリエの『新世界』が最優秀作として択ばれた。 「綱領」の存するコンクールに提出されただ…

リラダン『奇談集(Histoires insolites)』1888

作者の死の前年に刊行、ニ十篇を纏めた小品集。その前半はエドガー・アラン・ポーを彷彿とさせる奇譚が(そもそも本題からしてポーのHistoires extraordinairesに案を得たものとする考察もある)、後半はカトリックのモチーフ、例えば施し、戦闘的カトリック、…

リラダン『アケディッセリル女王(Akëdysséril)』1885

ヴィリエによる中篇小説。初出は1885年La Revue contemporaine誌上。ヴィリエは「死」について生涯深い瞑想を続けており、その思考は彼の諸作品に反映されている。それは『アケディッセリル女王』に於ても例外ではなく、本作品で明らかにさるヴィリエの「自…

リラダン『アクセル(Axël)』1890 再読

余暇を利用してヴィリエ・ド・リラダンの『アクセル』を再読。ヴィリエの精神的な遺書とも呼べる本作品は、至高の理想主義に彩られ、至純の美に耀く。 ledilettante.hatenablog.com さる公爵家の最後の娘サラ・ド・モーペールは、年古る尼僧院にて、修道の誓…

リラダン『反抗(La Révolte)』1870

短い生涯のうち四年の間、おのが精神力を抑へつけてやつた妥協が、その精神力を弱めてしまつた!今更どうしやうもない!(...)試練は終つた。わたくしは敗れた。 リラダンによる三幕からなる戯曲。1868年、作者三十歳の時に創作されたと推定されている。1870…

リラダン『幸福の家(La Maison de Bonheur)』1885

この二つの魂は、曙の光を見ぬうちから、生まれながらの純潔に耀いて、あたかも郷愁に悩むがごとく、「天上」の事物をのみひたぶるに慕ひ求むる一種遣瀬なき情熱を授けられて、その姿を現したのであつた。 リラダンによる短篇。初出は1885年『ラ・ルビュー・…

夢想するとは

夢想する、とは、先づ第一に、「愚かしさ」より千倍も賤しい劣等な精神の、至高権力を忘れ去ることです!それは永遠の掠奪者共の手の施しやうもない喚き聲に耳を塞ぐことです!それは各人が堪へ忍び萬人が相手に蒙らせてゐるあの汚辱、あなたが社会生活と呼…

リラダン『イシス(Isis)』第一部 1862

あなたがあの女の中で愛していらっしゃるものは、実はあなたの願望の実体なのです。『未来のイヴ』 ヴィリエが二十四の時の作品。第二部以下は原稿が失われたのか、未完に終わったのか不明。かのボードレールがこの書について賞賛を送ったことが判っているが…

リラダン『残酷物語(Contes cruels)』1883、その2

ledilettante.hatenablog.com ledilettante.hatenablog.com マーラーの第7番を聴きながら、『残酷物語』再読。「ヴェラ」や「サンチマンタリスム」、「見知らぬ女」など気に入っている小品は幾度となく読み返しているのであるが、この度は全体を通して。 『…

リラダン『未来のイヴ(L'Ève future)』1879

御冗談でせう!「美」といふものは「藝術」と人間の霊魂の問題です! 1880年のこと『ル・ゴロワ(Le Gaulois)』紙上にて、公に発表された。赤貧の貴族ヴィリエ・ド・リラダン唯一の長編小説。反ブルジョワ精神の結晶。私が読んだのは、東京創元社出版、斎藤磯…

リラダン『王位要求者(Le Prétendant)』1866

所謂「幻の書」。1866年に上梓されたと推定されるが、その稿本が発見されたのは1954年。1965年ジョゼ・コルティ社から刊行されたのは、実にヴィリエの死後76年目であった。初期作品らしく存分にロマンティックでありながらも、ヴィリエ作品の一貫した主題、…

リラダン『彼岸世界の話(Propos d’au-delà)』から「崇高なる愛(L'Amour sublime)」「こよなき戀(Le meilleur Amour)」1893

『彼岸世界の話』はヴィリエ最晩年の作を収めた短編小説集である。彼の死後4年目1893年に単行本として上梓された。 「崇高なる愛」1889世俗的な実際家エヴァリスト・ルソー・ラトゥーシュと、崇高なる魂の持主との間には、「愛」の認識について、非常な隔た…

エドマンド・ウィルスン『アクセルの城(Axel's Castle)』1931

米国人文学者による象徴主義についての文学評論。ヴィリエ・ド・リラダンの詩劇『アクセル』の主人公、アクセル・ドーエルスペール伯を、象徴派のあらゆるヒーローたちの典型であると看做し、書名に用いている。 ledilettante.hatenablog.com 象徴主義はロマ…

リラダン『エレン(Elën)』1865

1865年1月14日(私の誕生日!)、ヴィリエが27歳の時に上梓した作品。若きヴィリエの作品に、『未来のイヴ』や『アクセル』の充実感はあるのか?侮る莫れ。本作は崇高なる理想主義者であるヴィリエの本領が、存分に発揮された傑作。 不滅を探し求めていた男サム…

リラダン『新残酷物語(Nouveaux Contes Cruels)』1888

レミ・ド・グールモンが指摘するように、ヴィリエ作品は夢と諷刺の両者から成立っている。『新残酷物語』(1888)は『残酷物語』(1883)に続き、こうしたヴィリエの二面性が交互に愉しめる短篇集。 『寄宿舎友達』諷刺。近代社会の道徳顚倒、拝金主義。『希望に…

リラダン『アクセル(Axël)』1890

斎藤磯雄氏譯、東京創元社。ヴィリエの理想主義的な夢と中世趣味が見事に結晶した詩劇。ヴィリエの死後に出版された。 ledilettante.hatenablog.com 青春から逃れ、シュヴァルツヴァルトの古城で現身と永劫世界の間に揺れる男。美しき姫サラ(レオン・ブロワ…

リラダン『トリビュラ・ボノメ(Tribulat Bonhomet)』1887

信仰の思想を凌駕せるは猶思想の本能を凌駕せるがごとし -スウェーデンボルグ 東京創元社より斎藤磯雄氏の翻譯で。トリュビラ・ボノメ博士。その心は実用主義、折衷主義、進歩主義で芸術家嫌悪。「白鳥を殺す輩」。そうしたボノメが、不滅の霊魂に関心を寄せ…

ブロワ『リラダンの復活(La Résurrection de Villiers de l'Isle-Adam)』1906

リラダンは『イシス』から『アクセル』に至るまで、この無限に美はしく、天を支へる柱の如く強く、智天使らの上に君臨する者の如く全智にして、神そのものともなるべき女性、即ち、永遠の女性に対する憧憬の夢を犇と心に抱いてゐた 森開社による上梓。ヴィリ…

リラダン『至上の愛(L'Amour suprême)』1886

そして、ありし日と同じく、私は感じた、この若い女人に於て私を魅了するものは唯々その魂の清澄のみであることを! ヴィリエの短篇集、及びそこに録された同名一短篇。死を越えてこそ実現する男女の永遠の愛。譯者は本物語を、ヴィリエ自身の初恋の告白であ…

リラダン『殘酷物語(Contes cruels)』1883

『残酷物語』は、ヴィリエ・ド・リラダン伯爵が1883年まで種々の雑誌に発表してきた作品に推敲彫琢を施し、そこに未発表の4篇を加えて出版された短篇集である。 「ヴィリエは夢と諷刺の両者から成り立っている」とレミ・ド・グールモンは言う。この『残酷物…